「クマのプーさん」展
『クマのプーさん』(Winnie-the-Pooh)は、1926 年にイギリス人作家のA. A. ミルンが描いた子ども向けのお話です。少年クリストファー・ロビンのクマのぬいぐるみプーと仲間たちが過ごす日常が、E. H. シェパードの挿画を交えて綴られています。展覧会は、シェパードが出版社のE.P.Dutton(ダットン社)のために、1950~60 年代に描いた貴重な原画約100 点とミルンのことばとで、クマのプーさんの物語世界をじっくりとたどってゆきます。クリストファー・ロビンが大好きなプーや仲間たちと過ごした「夢のような時間」が空間全体に広がります。
「百町森」で絵とことばが響き合う「夢のような時間」を
PLAY! MUSEUMの名物でもある楕円形の展示室が、物語の舞台である「百町森(100 エーカーの森)」にさまがわりします。草木や風、水を想起させる特別な空間のなかで、原画を物語や詩とともに堪能し、クリストファー・ロビンとプーや仲間たちが過ごした「夢のような時間」を体験する場となります。
そんな「百町森」に向かう道をゆくと、「森のなかを行こう」と題した文章が出迎えます。 プーさんの物語の舞台となった、イングランド南部のアッシュダウンの森にも訪れたことのある、 作家の梨木香歩さんによる書き下ろしです。原作をオマージュしたリズミカルな言葉たちと、時節によって様々な表情を見せる森の様子を綴っています。「百町森」に迷い込んだら、どこからともなくプーが現れ一緒に歩く、そんな文とともに展示を楽しむことができます。
「クマのプーさん」シリーズ4冊の中で意外と知られていないのが、2冊の詩集『クリストファー・ ロビンのうた』『クマのプーさんとぼく』です。「百町森」では、1950~60年代に出版された2冊をまとめた本と、2冊からの抜粋集のために描かれた原画をいくつかの詩とともに展示します。
クマのプーさん」(Winnie-the-Pooh)は、1924年から1928年にかけてイギリスとアメリカで 出版された2冊の詩集と2冊の物語から成るシリーズです。詩集は『クリストファー・ロビンのうた』(When We Were Very Young、1924 年)、『クマのプーさんとぼく』(Now We Are Six、1927年)、物語は最もよく知られる『クマのプーさん』(Winnie-the-Pooh、1926年)と『プー横丁にたった家』(The House at Pooh Corner、1928 年)の2冊です。
日本での翻訳出版は1940年の『クマのプーさん』(当初は『熊のプー』)が最初で、1942年の『プー横丁にたった家』(当初は『プー横丁にたつた家』)とともに石井桃子訳で岩波書店から刊行されました。その後『クリストファー・ロビンのうた』は1978 年、『クマのプーさんとぼく』は1979年に、小田島雄志と小田島若子の訳で晶文社(現在は河出書房新社)から刊行されています。
本展では、1950〜60年代、アメリカのダットン社のシリーズ新装版のためにシェパードが描いた原画を約100点展示します。これらのカラー原画は、現在刊行されている岩波書店の『クマのプーさん プー横丁にたった家』『絵本クマのプーさん』の表紙や口絵に使われている、おなじみのものです。原画はダットン社の親会社であるペンギンランダムハウスが所蔵しています。