名古屋市美術館開館35周年記念 福田美蘭‐美術って、なに?

絵画の新たな可能性を切り開いてきた画家、福田美蘭が、名古屋市美術館で開かれている個展「福田美蘭―美術って、なに?」(11月19日まで)で、新作を発表している。

時代を鋭く映し出す作品には、どんな秘密が隠されているのだろうか…

名古屋市美術館の会場には、1980年代末以降、今日に至る代表作と最新作が、3章構成で展示されている。

そこから伝わるのは、美術作品を身近に感じてもらおうとする強い意志だった。…(日本経済新聞より)

福田美蘭(1963-)は、東京藝術大学大学院を修了後、具象絵画の登竜門といわれた安井賞を最年少で受賞し、国内外で活躍を続ける現代美術家です。

現代社会が抱える問題に鋭く切り込み、東西の美術、日本の伝統、文化を、意表を突くような手法であらわしたりして、私たちの既成概念を打ち破ってきました。

本展ではまず「序章」として、福田の作家としてのあり様をイントロダクションとして見せる。この構成について、福田は次のように語っている。「今回は、中部地域での初の個展ということもあり、私という作家をまず知ってもらうような構成になった。客観的な立場で自身の創作を見つめられるという点で、新鮮な展覧会になった」。(美術手帖より)

絵画という、古くから受け継がれてきたメディアと徹底的に向き合うことで、現代がイメージの蓄積であり、その蓄積が歴史となっていくことを明らかにする。そんな福田の生業が明らかにされる展覧会と言えるだろう。(美術手帖より)

 

福田美蘭《ポーズの途中に休憩するモデル》 2000年、アクリル・パネル、富山県美術館蔵

福田美蘭による解説(抜粋)
実在した人物の肖像画であれば、そのモデルにポーズをとらせ、実際に見て描いたことが考えられる。その場合、画家は必ずモデルに休憩をとらせるので、ポーズをとっているときのモナ・リザを見る目とは違う自然な視点でレオナルドは休憩中の彼女を見ていた。その視界を、私が想像してレオナルド風に描くという作品。

福田美蘭《ミレー“種をまく人”》
2002年、アクリル、ピエゾグラフ印刷・特殊紙、山梨県立美術館蔵

福田美蘭による解説(抜粋)
ミレーの《種をまく人》は国内所蔵の名画の一つであり、多くの日本人が古くから親しんできた。オリジナルは右手を後ろに振って、これから種をまこうとして力をためた瞬間を描いたものだが、実際に絵の中の人物が何をしているのか理解していないのではないかと思い、ここではその手が前方に向かって振り抜かれ、種が手から放たれた瞬間に描き直している。現代において名画を見るということ、知っているということの不確かさについて考えた作品。

福田美蘭《見返り美人 鏡面群像図》
2016年、アクリル・パネル、平塚市美術館蔵

福田美蘭による解説(抜粋)
菱川師宣の《見返り美人図》は、当時流行の帯の結びと鮮やかな衣装といった現実に目にしているものを描きながらも、写実ではない、あくまでも師宣の江戸の理想の美人像であることで、見る者を強く引き付ける描写となっている。師宣の理想の世界を、絵画の中で鏡に写すことで、そのリアリティを実体のある姿として見てみたいと思い、ここでは無背景を角度と向きの違う6枚の鏡面に見立てて、そこに映り込む姿を描いている。

 

福田美蘭《開ける絵》
2000年、アクリル・パネル、額縁、鉄、ゴムバンド、作家蔵

福田美蘭による解説(抜粋)
この作品は、二つ折りになった状態で壁に掛けられていて、絵を観たい人は自由に手で開けて鑑賞することができるという作品。開けた後は自然に閉まるようになっている。美術館などで、額に入った絵画を鑑賞する場合、順路に従って、最適な照明と、絵と絵の間隔、また近寄って触ってはいけないという暗黙の了解など、与えられる状況を当然のことだと思っている中で、どれだけ自発的にその絵を観ようとしているか、ということを考えた。

福田美蘭《世界貿易センタービルの展望台》
2008年、アクリル・パネル、富山県美術館蔵

福田美蘭による解説(抜粋)
大学生の頃に、切り取って集めた物の中から見つけた写真は、ビルの高層階からの眺望で、縦長の窓枠と景色で、私はすぐにそれが9・11で航空機に激突されたビルの展望台だとわかった。写真を切り抜く当時の、ニューヨークが好きだった自分の気持ちと、この展望台は存在しない事実が私の中で混在し、同じ写真から受ける印象の隔たりは経験したことのない衝撃だった。その驚きも記憶として薄れていくと思い、写真をそのまま拡大して描いた。

福田美蘭《ゼレンスキー大統領》
2022年、アクリル・パネル、練馬区立美術館蔵

福田美蘭による解説(抜粋)
2022年9月から東京・練馬区立美術館で開催の「日本のマネ-出会い、120年のイメージ-」展の準備とともにロシアによるウクライナ侵攻が始まり、私はこの危機をどう捉えるか作品にするうえで、連日報道されるゼレンスキー大統領の姿の中に、マネの現実認識による曖昧さそのものをイメージした絵画について考えることができると思った。ゼレンスキー大統領がまっすぐこちらを向いてスピーチするその視線と目が会うとき、悲惨な動画よりもさらに、この戦争がSNSという武器によって、サイバー攻撃や偽情報による心理戦という手段にその情報を見極める能力が求められていることを思う。膨大な情報が混在する中、現実は不明瞭であるという現実表象の不確定な時代を、マネは絵画によって目に見えるかたちにしたのではなかったか。

 

 

本展では、古今東西の名画に福田独自のユニークな視点で向き合った作品から、国内外の時事問題をテーマに鋭い視点で切り込んだ作品まで、約50点で福田美蘭の世界観を紹介します。

本展のために新たに制作された作品も公開予定です。

 

 

展示室内は写真撮影可能 (※一部作品を除く)

ただし、以下のルールをお守りください。

  • 三脚やフラッシュ、自撮り棒等は使用禁止です。
  • 動画の撮影は禁止です。
  • 撮影した画像は、営利に関わらない個人利用に限ります。
  • SNS等への投稿は撮影者の責任において行ってください。本展主催者は一切の責任を負いません。

ホームページより

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